課長のケーキは甘い包囲網


「いえ、とんでもないです。沢島部長には会社で本当にお世話になっています。今回のはなしも実はうちの父が部長を気に入って息子さんにどうかと勝手に……」

 そういうことか。父さんが主導するとはとても思えなかったが、要するに父さんが気に入られて俺まで話が落ちてきたんだな。

「木村さん。申し訳ないのですが、僕にはお付き合いしている人がいます」

「そうじゃないかと思いました。こんなイケメンの方がお相手いないなんて考えられませんから……」

「いや、そういうことじゃなくてですね、申し訳ないですがお話しはなかったことにしてください」

「あっけなかったですね。お目にかかってイケメンだからつい嬉しくなってしまったんですけど、お話しもろくにできないうちにフラれてしまいました」

「いや、そんなつもりじゃなかったんです。申し訳ありません」

 俺の予感は的中した。この間、電話でそろそろ身を固める気はないのかと父に聞かれた。