「……お前、それでどうする気なんだ?」
「どうする気って?」
「あほか。どうしてここを解約してないんだ?」
「……だって。付き合うまでは違うところ捜していたし、夜帰るときに気をつけていれば、ここにまだ住むこと出来るかもしれないって思って」
お兄ちゃんが頭を抱えている。
「お前のそう言うところを見抜かれてるんだろうな。家から出したらきっとまたここに戻って何事もなかったかのように暮らすだろうって思われてるんじゃないのか?」
「……確かにそうかもしれない」
「すみれ。例の縁談、父さんまだその気らしい。問題は相手の奴だ。お前知り合いなんだろ?」
そう。そうなのだ。忘れてたけどそれがあった。



