課長のケーキは甘い包囲網


「あ、うん。知り合いに上手な人がいてね、そこへお邪魔して教えてもらってるの」

「ふーん。その割には調味料もないようだが……すみれ、正直に言え。お前、どこに住んでるんだ?」

 びっくりした。単刀直入にもほどがある。どうしてわかったんだろう。お兄ちゃんは私の慌てた顔を見て、大きなため息をついた。

「……ここに住んでるよ」

「すみれ。言いたくなかったが、お前この家の空気がおかしい。ずっと閉めっぱなしだっただろ?部屋もほこりがある。それに、お前ここに……」

 お兄ちゃんが胸元を指さして言った。

「跡がついてる。鏡よく見てみろ。そんな襟ぐりの広い服着たら、すぐにわかる。男と住んでいるんだろ、お前」

「ええ!?嘘でしょ……」

 私は真っ赤になったんだろう、お兄ちゃんが「はああ……」と大きなため息をついた。