課長のケーキは甘い包囲網


「ああ、そうだな。アイツに……久しぶりで会った」

 やっぱり。私は彼の胸を押して、身体を遠ざけた。

「おい勘違いすんなよ。決着を付けてきただけだ。それにあいつは結婚が決まったから連絡をよこしたんだ。イチジクのケーキはそのおまけだ」

「……は?結婚……え?」

「あいつは最後だからけじめだといって連絡してきたんだ。のろけも聞いてきた。馬鹿馬鹿しい。心配してくれなくても、俺も好きな女がいると言って別れてきた。それがお前だよ、すみれ」

 私は何を言っていいのかわからなくなって、彼を見上げて固まった。想像と違った。どうしよう、なんて答えるんだっけ?

「すみれ」

 彼はもう一度そう言うと、私の顎を捕らえて唇をついばんだ。

「……んっ……」