課長のケーキは甘い包囲網


 今日急に出て行ったら怒られるような気がするから、明日以降、出て行こう。きちんと話して出て行く。

 決めたらすっきりした。急いでお風呂に入り、ベッドへ入った。

 課長はまだ帰ってこない。私は目をつむって現実逃避を決め込んだ。いつの間にか眠ってしまっていた。

 朝、いい匂いで目が覚めた。

 甘い匂いが漂っている。うん?私、ケーキ出しっぱなしにしたっけ?いや、冷蔵庫に閉まったぞ、絶対。

 部屋を出ると、キッチンに灯りが見えた。もう、日が昇っているのに何で灯りがついているんだろう。

 近づくと、課長がキッチンにもたれて椅子に座って寝ている。

 すごくいい香り。これってあのフルーツのパウンドケーキの匂いじゃない?見ると、オーブンに何か入っている。

 悪いけど誘惑に負けてしまい、勝手にガチャッと開けて中を見る。

 うそ、パウンドケーキだ。私の大好きなあのフルーツいっぱいのパウンドケーキ。え?課長が手作りしたって事?

 私は時計を見て、まだ六時だと気づいてびっくりした。