「ぶ」
もうちょい可愛い声でないんかい、と自分で突っ込んでしまった。
「うお、すいません、大丈夫ですか?」
私より遥かに高い身長。
顔を見上げたら…
「あ」
「…ん?」
向こうは気づかなかったようだけど。
あの手首の患者さんだ。
「…えと…」
私がだれか考えているようだ。
「見覚えありません?」
髪を結んで、前髪を耳にかけて、眼鏡の動作をする。
「…あ、病院の?」
普段は患者さんとプライベートで会いたくないけど、こっちが気づいて声出しちゃったからね。
「そうです。ぶつかってすいませんでした」
「いえいえ、こちらこそ」
お互いすいませんと頭を下げる。
「明日リハビリ行こうと思ってて。
ズキズキしてたのがなんぼか良いです。
やっぱ、痛いのは痛いけど」
ははっと、苦笑いしている。


