きっと、君に怒られるだろうけれど



「はい、書けたよ」


そう言いながら、紙とボールペンを彼に返す。


「ありがとう」


彼はお礼を言うと、何やらポケットから一枚のピンク色の付箋を取り出して、先程わたしが渡したばかりの紙と付箋を真剣な眼差しで凝視して、見比べている。


何をしてるんだろう?
付箋になにか持ち主のヒントがあるのだろうか。


彼をじっと見つめていると、その表情は徐々にぱあっと花が咲いたような明るいものへと変わった。

そして、少年のように澄んだ瞳をまるで宝石を見つけた時のようにキラキラと輝かせながらわたしの両手をがしっ、と掴んだ。


「え、なに。どうしたの?」


突然のことにわたしは驚きの声を上げた。

なんでわたしは彼に手を掴まれているんだろう。

全然、理解が追いついていないのに目の前にいる彼の笑顔が眩しすぎて全てがどうでもよくなってしまいそうになる。

いや、どうでもよくなっちゃダメなんだけれど。


「俺はずっと君のことを探していたんだ……!」


本当におとぎ話のようなセリフが彼の口から出た瞬間、驚きのあまり呼吸を止めた。