きっと、君に怒られるだろうけれど



『ハアハア、いきなりなに……』


手を膝について、息を整えながら落としていた視線を上げてわたしは言葉を失った。

目の前に広がっていたのは、夕焼けが始まり、空が朱と金に染まる中、桜並木の真ん中でまんまるな夕日が柔らかい赤みを帯びた光で世界を照らしていて、中央に流れる川の水面に逆さまになった桜、夕焼雲、夕日が反射しており、思わず見入ってしまうほど美しい景色だった。


『……綺麗』


ぽつり、と無意識に洩れた声。

こんなの、知らなかった。
いつも通っている道なのにこんなふうに立ち止まって見たことは無かった。

少し意識を変えるだけでこんなにも美しい世界が見れるんだ。


『だろ?俺たちこんなに綺麗な世界で生きてるんだよ』


お日様のような優しい笑顔を浮かべて言った彼。
その笑顔に心を奪われて、鼓動が忙しなく音を立て始める。


『……生きてるって、悪くないね』


何故だかはわからないけれど、そんな言葉がぽろりと口を突いて出た。

つい先程まで暗い闇の中にいて毎日のように死を意識していたのに、この息を吞むほど美しい景色を見ていたら不思議と生きているのも案外悪くないのかもしれないと思えてきたのだ。