『小芝さん、今帰り道?』
『そうだよ』
『ここが帰り道なんていいなあ』
立派に咲き誇る満開の桜色を見ながら、にっこりと優しく微笑んで言った。
『なんで?』
どうしてそんなに羨ましがるんだろう。
別に大した道でもないのに。
『春になったら、毎日こんな景色を見ながら登下校できるって最高じゃん』
『え?』
たかがそんなこと?
別に毎日見てたら飽きてくるし、どうってことないと思うけれど。
『今、そんなことって思ったろ?』
考えていたことをそのまま言葉にされて大きく目を見開いた。
な、なんでバレているの……?
『えっと、それは……』
『まあ、いいから来てよ』
彼は屈託のない笑顔を向けると、わたしの腕を掴んで勢いよく駆け出した。
『え、あ、ちょっと……!』
訳も分からず、とにかく足を動かして必死に彼についていく。
風の抵抗を受けてわたしの長い髪がゆらゆらと靡いている。
走ったのなんていつぶりだろう。
春風が頬を撫でてそれが心地よくて、気持ちいい。
すると、少し走った先にある石橋の上で彼が足を止めた。



