きっと、君に怒られるだろうけれど



カバンから必要な教科書やペンケース等を取り出してからカバンを横のフックにかけ、先程も見たばかりの校庭に咲いている満開の桜の木に視線を向けた。


今年も綺麗に咲いたなぁ。


ここから見るのと間近で見ることではまた景色が違って見えて面白いんだよね。

来年はもっと綺麗に花を咲かせるのかな。


ぼんやりとした頭でそんなことを考えていると、突然わたしの前に人影が現れ「小芝さん!」と懐かしい声がわたしの名前を呼んだ。


その声に思わず、ハッと弾けたように視線をそちらに向けると、にこっと八重歯を口から覗かせ、眩しい笑顔を浮かべて立っていたのは、クラスメイトの三春櫂(みはるかい)だった。


スラリとした長身、パッチリとした二重の大きな瞳、スッと整った鼻筋、どこか中性的な顔立ちでお日様のような笑顔が良く似合う彼は誰が見ても目を惹く美男子だ。


彼は高一の春休みに交通事故に遭い、最近復学してきたばかり。


そして、わたしの好きな人であり、元恋人である。
ただ、彼はわたしと付き合っていたことを全く覚えてはいない。