だって、彼にはわたしの記憶はないのだから。
そのノートに櫂のことが明確にわかることなんて書いていないはずだ。
「え、なんでいきなりそんなこと……」
そこまで言ってわたしは言葉を詰まらせた。
いや、待って。
そのページって、まさか。
「だって、これ」
彼が指さしたのはわたしの計画が書かれたページだった。
やらかした。見られてしまった。
完全に迂闊だった。
動揺から心臓がばくばくとうるさく音を立てていく。
①君に話しかけて仲良くなる
②君に幸せになってもらう
③君の夢への背中を押す
ノートにはそう書かれていてどうやって誤魔化そうかと頭をフル回転させる。
どうしよう。
なんて答えるのが一番怪しまれないだろうか。
ここは素直に好きな人がいると答えるのが自然かもしれない。
「あ、それはー……うん、好きな人がいて。それで書いた」
さすがにそれが櫂だということは口が裂けても言えないけれど。



