きっと、君に怒られるだろうけれど



「仕方ないなぁ」


単純にわたしは櫂に弱い。
いや、好きな人に弱いのかもしれない。

好きな人のためだと何でもしてあげたい、叶えられることなら叶えてあげたい、と思ってしまう。

ダメってわかっているんだけどね。


「さんきゅー!」


櫂はわたしからノートを受け取ると、宝石のように瞳をキラキラと輝かせながら短文を一つ一つじっくりと読んでいるようだった。


先生にバレないようにしないと……。


まあ、先生から見たら数学のノートを見せてあげているようにも見えるから注意はされないと思うけれど。


ふいに視界の端にいる櫂の動きが止まった、ような気がした。


どうしたのかと思い、隣に目を向けると、彼はノートの一点だけをじっと見つめていた。

なんか好きなのとかあったのかな……?


「……美桜って、好きなやつとかいんの?」


ふいに尋ねられた言葉に心臓がドキリと大きく跳ね上がった。

まさか……自分のことが書かれていることに気づかれた?

いや、そんなことはない。