きっと、君に怒られるだろうけれど



戻ってはこない昔を思い出して、ぼんやりとした頭でノートを見つめる。
けれど、ノートを捲るにつれて、ポエムが段々少なくなっていくことに気づく。


これが当時のわたしの馬鹿だったところだ。
どうしてもっと早く気づけなかったのかなあ。


そんなことを考えていると、ふいに右腕をツンとつつかれて弾けたように視線をそちらに向けると、櫂が不思議そうな顔をわたしに向けていた。


い、いつの間に起きてたの……!?


一人の世界に入り込んでしまっていたから授業なんてまったく聞いてなかっただけでなく、櫂が起きていることにすら気づいていなかった。


「ご、ごめん……何ページだっけ?」


慌てて、適当に開いていた教科書をパラパラと捲る。


「いや、違うくて。それ、見せてよ」


彼が指さしたのは、先程までわたしが見ていたノートだった。


「え、これは、あの、ちょっと……」


この前の付箋ならまだしも、このノート自体を見られるのは顔から火が出るくらい恥ずかしい。

しかも、ほぼ櫂との恋を綴ったものだからなおさら見られるのは抵抗がある。


「もっと美桜の文章がみたい」


曇りのない真っ直ぐな瞳でそう言われると、抵抗していた気持ちが不思議なくらいに、するりするりと解けていく。