きっと、君に怒られるだろうけれど



ほら、言わんこっちゃない。
でも、こういうところが可愛いんだよね。

そんな彼を見ているとくすりと小さな笑みがこぼれた。

机の中から綴った文章をまとめているノートを取り出し、ペンケースから付箋を取り出して先生に見つからないようにカリカリとペンを走らせる。


―――

うつらうつらと船を漕ぎ
癖のない黒髪がさらりと揺れる
長いまつ毛がぴくりと動いて瞼が開くその時
君の瞳に一番最初に映るのはわたしがいい

―――


頭の中でふと思いついた文章を好きなように組み立てる。

君が目を覚ます時、その澄んだ瞳に一番最初に映すのはいつもわたしであってほしい。
許されるのなら、「おはよう。寝すぎだよ」なんて言いながら笑って起こすのはわたしがいい。


そんな叶いもしない願いを込めて綴ったけれど、読み返すとなんだか虚しくなってくる。

このノートには櫂への想いが詰まった文章がいくつも綴られている。

言わば、日記のようなものだった。
毎日ではないけれど、彼と過ごす日々を文字にしていた。

頬杖をついて、ペラペラとページを捲り、思い出を読み返す。