きっと、君に怒られるだろうけれど



「お前なぁ、復学してきてもう一週間経つんだぞ。次忘れてきたら成績下げるからな」

「それだけはご勘弁を!ただでさえ数学は崖っぷちなんで!俺には先生しかいないんですよ〜」


櫂の陽気な回答に教室がどっと笑いに包まれた。


「はぁ、ほんとにお前ってやつは。小芝に感謝しろよ」

「はい!」


先生は呆れた表情で櫂を見ながらも「今日は因数分解をするからなー」と、授業を始めた。

視界の端に艶のいい黒髪が映って、妙にソワソワとしてしまう。

付き合っていた頃は今の距離よりも、もっと近い距離にいたのに好きな人の隣にいるのはいつになっても慣れない。


わたしの全神経が隣の彼に集中してしまっていて先生が話す授業の内容なんて何一つ頭に入ってこない。


ダメだ……全然集中できない。

ちらりと隣の彼を盗み見る。

さっそく脳がシャットダウンしているのかこっくりこっくりと頭がゆっくり上下に動き、居眠りをしていた。