きっと、君に怒られるだろうけれど



なんか腹立つなあ。

そう思いながら、えいっ!と、わたしは後ろからシャーペンで西神の背中をつついた。


「いてぇな、なにすんだよ」

「ふふっ。あんたがバカにして笑うから」

「はあ?お前がバカみたいなことするとかいうからだろ」


西神はわたしの目的を全部知っている。

わたしの記憶をなくした櫂に今度こそ相応しい相手を見つけるという計画を。


「バカって言わないでよ。わたしの一世一代を掛けた大勝負なんだから」


そう。絶対に失敗できないことなんだ。

君が幸せでいてくれるのならわたしはどれだけ傷ついたっていい。


この恋がもう二度と叶わないとわかっている。

きっと、何度も君を想って苦しくなって泣いてしまうとわかっているけれど、それでもわたしはやり通さねばならない。

苦しむのは、わたしだけで十分だから。