「なあ、美桜」

「なあに?」

「来年……一緒に桜を見ようよ。そしたら今度こそちゃんと美桜の前で俺がシャッター切るからさ」


ほんのりと頬を赤らめて視線を左右に彷徨わせながら言った櫂の言葉に胸が切なく疼いた。

来年……か。
一緒に見れたら嬉しいなぁ。

君の隣で、何も変わらない日々の中で、できればわたしのことを撮ってほしいけれど、それは叶わない。
だけど、嘘でもわたしは君と約束したかった。


「ふふっ、楽しみにしてるね」

「約束だぞ」

「わかったよ。ほら、指切りげんまん!」


わたしたちは、お互いの小指と小指を絡め「嘘ついたら針千本のーます!ゆびきった!」と笑い合って当たり前にあるはずの未来に約束を交わした。


―――君との二度目の始まりはまるでおとぎ話のようだった。