きっと、君に怒られるだろうけれど



「自分じゃわかんないんだけどさ、俺は自分が好きだって今だって思った瞬間にシャッターを切りたいんだ。だから写真を撮りに行ってもそう思わなかったら何にも撮らないで帰ってきちゃう時とかあるんだよなあ」


一緒に行った人によく怒られる、とおどけたように笑う。

わたしもよく一緒に撮りに行ったなぁ。


ある時は大自然を撮りたいと言い出して、二人で電車とバスを乗り継いで田舎の方の山を登って、またある時は海が撮りたいと言い出したから自転車で2ケツして行ったっけ。

それだけでなく、ただの日常も彼はカメラに収めている。


どこまでも青く澄んだ空、

今にも雨が降り出しそうな厚ぼったい灰色の雲、

休憩しているのか電線に止まって一列に並んでいる雀、

街中にあるちょっとオシャレなカフェの看板、

その辺に生えている草に降りた一滴の朝露、

どこかの小学生が授業で育てた美しい朝顔、

中庭の花壇に植えられた色とりどりのチューリップ。


そのどれもが美しく、彼が切り取る世界がわたしは大好きなのだ。