きっと、君に怒られるだろうけれど



あの時、痛みを緩和させるために耳を保冷剤で冷やしていたけれど、ガチャン、というピアッサーの音が想像していたよりも大きくてそれに驚いてしまった櫂とわたしは半泣きになっていて、それが何故だか無性に面白くて二人で腹を抱えて笑ったっけ。

懐かしいな。色褪せないわたしだけの思い出。


「見た目なんて関係ないけど、それ外さないの?」


もうわたしとの思い出なんて覚えていないのだから別に外すことだってできるのにどうして彼は未だにピアスをつけたままなんだろう。


「んー、なんか外したくないんだよな。何がきっかけで開けたとか覚えてねえけど、大事な思い出だった気がして」


息が止まるかと思った。

何も覚えていないはずなのに、大事な思い出だと記憶の中にしまい込んでいたのはわたしだけだと思っていたのに……そうじゃなかったんだ。


「そうなんだ……でも、三春くんが撮る写真、きっと素敵なんだろうなあ」


動揺を顔に出さないために話を逸らすような話題を口にしたけれど、実際わたしは彼が撮る写真がとても好きで、今だってスマホにデータが残っているくらいだ。