きっと、君に怒られるだろうけれど



昔の櫂のおかげでもう一度、今の櫂と話すことができているということになる。

人生、本当に何があるかなんてわからないなぁ。


「そっか、いい趣味だな」

「三春くんは?写真撮るの、好きなの?」


彼の首にかかっている立派なカメラを指さしながら言った。

本当は答えを知っているけれど、そんなこと櫂は知らないから。

“三春くん”と慣れない名前で呼んだことも。


「うん、好きだよ。俺、写真部なんだ」

「そうなんだ。意外だね」


できるだけ、不自然にならないように会話に気をつける。


「それよく言われる。そんな身なりなのに写真部なんだとか」


苦笑いを浮かべてそう言いながら彼は耳を飾っているシルバーのピアスを触る。

そのピアスの穴はわたしが開けたんだよ。

当時、二人でいる時にわたしが会話の中でピアスをつけている人っていいよね、と何気なく言ったことを覚えていたのか次の日にピアッサーを手に持って、


『これ!開けて!美桜に俺のこともっと好きになってほしいから!』


と、本人は至って真剣な表情で言ってきてわたしが何度も説得したのに全く聞く耳を持たなかったから仕方なく開けたのだ。