きっと、君に怒られるだろうけれど



図書室に入ると紙やインクの独特な匂いが鼻いっぱいに広がる。

放課後の図書室は誰もおらず、静寂に包まれる中でチクタクと時計の秒針の音だけが俺を出迎えてくれた。


それもそのはず。

もうすぐ春休みに突入することもあり、委員会もなく、よっぽど用がない限りあまり人は来ないからだ。


まあ、そのほうが俺的には好都合なんだけど。


そんなことを頭の片隅で考えながら歩き出して辺りをきょろきょろと見渡す。


「2列目ってどっち本棚の2列目だよ」


もう会うことはできない西神への文句がつい洩れた。

俺の目には左側と右側にずらりと本棚が並んでいるのが見える。

それぞれ本の種類によって分類されており、わかりやすいようにラミネートされた紙が本棚の側面に貼られている。


美桜が俺に遺したかったものというのは一体何なのだろう。


どくんどくん、と緊張感を募らせながら右側の本棚の2列目まで歩いて端を見る。

そこにはただ本がぎっしりと収納されているだけで、西神の言っていたようなモノは置いていなかった。


「はあ……」