きっと、君に怒られるだろうけれど



「はい、チーズ……っ」


―――カシャ。


わたしが聞くのは最後になるであろうシャッター音が室内に切なく響いた。

わたしも、櫂も、顔が涙でぐしゃぐしゃだった。


「ふふ、ありがとう。これで満足だよ」


悔いなく、死ぬことができる。


その刹那、心臓がドクンと大きな音を立てた。

もうタイムリミットが迫ってきていることに気づいたわたしは「櫂、わたしの分まで生きて。幸せになるんだよ。じゃあね!」と告げてから教室を飛び出した。


櫂の前では死ねない。死にたくない。


せめて誰もいないところで。


そう思うのに段々と息が苦しくなってきて少し走った先の廊下の壁に背を向けてズルズルと座り込んだ。


「はあはあ……っ」


苦しくて、息が乱れる。

大きく肩を揺らしながら胸元をぎゅっと強く握りしめた。


「ちゃんと話せたか」


そこに現れたのは初めて出会った時と同じ服装をした死神だった。


「お、かげ、さまで……っ」


わたしの言葉に死神が「そうか。ならよかった」と言って切なさを孕んだ目を細めた。


「櫂が、こない……うちに……っ」


あの世へ連れて行って。

櫂が来たら本当に諦めがつかなくなるから。


「そうだな。さあ、小芝美桜。そっと目を閉じろ」