きっと、君に怒られるだろうけれど



「死なないでくれ……!」


どういう意図があったのか知らないけれどわたしの秘密を教えたのはきっと西神だろう。

だけど、わたしが櫂の身代わりで死ぬことは教えていないみたいでよかった。


「ごめんね。たくさん傷つけて、たくさん泣かせて。でも、わたしに数え切れないくらいの思い出をくれて本当にありがとう。叶うなら永遠に櫂といたかった」


一緒に他愛のないことで笑い合ったり、時にはぶつかり合って喧嘩したり。

そんな何気ない日々をこれからも二人一緒に歩んでいきたかった。


「美桜……っ」

「最後に一つだけ、わがまま言ってもいい?」


――――本当は忘れて欲しくなんてない。わたしはあなたの中で生き続けたい。


なんて、欲にまみれた言葉は声に出来なかった。
だって、言ってしまえば君をもっと苦しめることになるとわかっていたからだ。


「それでわたしの写真、撮って」


そう言ってわたしは櫂が首からかけていた愛用のカメラを指さした。

櫂は一瞬、驚いた顔をしたけどすぐに首を上下に振って距離をとるために後ろに下がる。

その様子を見ていたわたしは彼の作品の横に立って、これ以上ないくらい微笑んで見せた。


すると、櫂が腕で涙を拭ってカメラをかまえた。