「いや……小説とかは書けないし、入ってないよ。わたしは好きなことや感じたことを文章にするのが好きなんだよね。趣味みたいなもんだよ」
昔から本を読むのが好きで、自分も何かを書いてみたいと思ったのがきっかけだった。
何気なく過ごす日々の中で感じたことや好きだと思ったことをポエムのような短い文章にするのが好きだったけれど、それを誰かに打ち明けたことはなかった。
理由は簡単で誰かに否定されたり、バカにされるのが怖かったから。
わたしが書いていたものは恋愛的なものが多かったし。
だけど、初めて櫂にわたしが書いた言葉たちを見せた時も今みたいにお日様みたいに笑って『すごいなぁ。俺、美桜の綴る文章が好きだよ』と優しく頭を撫でて言ってくれたんだ。
単純に嬉しかった。
なんの取り柄もなかった自分が誰かに少しだけ必要とされて認められたように思えたから。
それからわたしはコソコソと隠すのをやめて、好きなものを好きなだけ綴ることに決めたのだ。



