これ以上、真っ直ぐな気持ちを向けられるのが耐えられなかったからだ。
わたしは西神を好きな設定になってるし、これでいい。
もうすぐ、すべてなかったことになるのだから。
「……俺は、美桜に死んでほしくない」
「え?」
ぽつりと小さな声でこぼされた言葉。
今……美桜に死んでほしくないって聞こえたような気がする。
まさか、櫂はわたしの命がもう長くないことも知っているの?
「な、なに言って……」
「俺は美桜に生きていてほしい」
不純物なんて一つも含んでいない澄んだ瞳で真っ直ぐ見つめられると、途端に何も言えなくなってしまう。
叶うのなら、ずっと、ずっとこの幸せの中にいたかった。
許されるなら、ずっと、ずっと一緒にいたかった。
「ごめんね」
言葉を発した瞬間、鼻の奥がツンと痛み、目の縁から涙が染み出てきて視界が歪む。
「一緒に桜見れなくてごめんっ……約束守れなくて……っ」
涙で震える声で何度も謝罪の言葉を口にする。
せっかく約束してくれたのに破ってごめんね。
最初から守れないこともわかっていたのに嘘をついてごめんね。
「なにいってんだよ……そんなの……」



