きっと、君に怒られるだろうけれど


ひしひしと伝わってくる君からの想いに胸が張り裂けそうなほど、痛くて、息ができなくなるみたいに苦しかった。

もう、終わってしまうというのに。

わたしと君が幸せに生きる世界も、同じ未来を生きていける世界も、もうどこにも存在しないというのに。

次々に溢れ出てくるわたしの涙は、伝えられない君への想いのように思えた。


ダメだ。やっぱり櫂には会えない。帰ろう。


「美桜」


ふと、後ろから名前を呼ばれ反射的に振り返った。
そこに立っていたのは一番会いたくなかった人……櫂だった。

会いたくなかったのに。
どうして上手くいかないのかな。


「ええ!?なんで泣いてんの!?」


まさかわたしが泣いているなんて思ってもいなかったのか慌てたようにそう言って、頬を伝う涙を親指でそっと拭ってくれる。


このあたたかい手が好きだった。

そのさりげない優しさが好きだった。