きっと、君に怒られるだろうけれど



近づけば近づくほど……半年間の記憶まで消えてしまうのか。

なんて残酷なんだろう。
だけど、人の命や運命を変えるということはそれだけ大きなものなのだろうな。


『例えば、半年間でお前が三春櫂と特に関わらずにただのクラスメイトで終えたとするなら彼の記憶の中でお前はただのクラスメイトだったということになるが、深く関わって友達や恋人で終えたら彼の中でお前の記憶は全てなかったことになる。思い出すこともない。もちろん、周りの人間の記憶も一緒に改ざんする』


きっぱりと冷たく言い放った死神の言葉がグサリと心に刺さって呼吸が止まる。


思い出すこともない、か。

わたしが半年間で彼と親密な関係になればなるほど、わたしがいなくなった後、櫂の中でわたしの存在は完全になかったことになってしまうということだ。

それどころかわたしが生きていたという証は誰の心の中にも残らない。

すべて消えてしまう。


『……それでも本当にいいのか』


何も言わないわたしに死神が今度はそっと問いかける。


『うん、それでいい。どうせ忘れちゃうなら櫂に幸せになってもらうために半年間、頑張るよ』


好きな人を作ってもらって、わたしがいなくなっても楽しく生きていけるように。

将来の夢を全力で応援して、背中を押すことでいつか君の夢が叶うように。


『わかった。これで契約成立だ』


わたしはこの時に人生最後の瞬間まで、君に捧ぐことに決めたのだ。