その言葉を聞いて、わたしは事故現場を見ていないのに脳内で彼が小さい子を守って車に轢かれるところが想像できた。
それくらい、その行動はどこまでも優しさに溢れた君らしいと思ったのだ。
『櫂……っ、か、い……っ』
何度も、何度も、縋りつくように愛おしい君の名前を呼ぶけれど返事はない。
どうしてわたしはあのとき帰ってしまったんだろう。
大嫌いなんて言わなきゃよかった。
もっと、素直になって櫂を許してあげればよかった。
後悔したってもう遅いのに我慢していた涙が堰を切ったように溢れ出てきていくつもの透明な雫が頬を伝う。
『これ、この子……ずっと握りしめてたんだって……きっと美桜ちゃんにあげるつもりだったんでしょうね。毎日夜遅くまで短期のバイト頑張ってたから』
そう言って、涙を流すおばさんがわたしに差し出してくれたのは所々破れてボロボロになってしまったピンクの紙袋だった。
バイトって……?
初めて聞く事実にわたしは驚きが隠せなかった。
最近、夜に連絡が返ってこなかったのはそれが理由だったの?
『これを……櫂が?』
『売り切れる前に買うんだって早めに出て行ってちゃんと買えたのに渡す前に事故に遭うなんてね……』
『え?』



