櫂がいなくなるかもしれない、と思うと言葉では表せないほどの恐怖が容赦なくわたしに襲いかかってくる。
お願い、どうか死なないで。
わたしから櫂を奪わないで。
それだけを祈ってわたしは周りの目を気にすることもせず、ただひたすらに走った。
看護師さんに案内されて急いで入った病室。
そこで目にした光景は、胸をえぐられるような衝撃的なものだった。
おばさんとおじさんがベッドで呼吸器をつけて眠っている櫂を声を押し殺して泣きながら見つめている。
『……おばさん、おじさん』
わたしの声に反応した二人の視線がゆっくりとこちらに向けられる。
『美桜ちゃん……来てくれてありがとう』
おばさんが苦しいはずなのに小さな笑みを浮かべる。
『とんでもないです……すみません。こんなことになって……』
『ううん、美桜ちゃんのせいじゃないわ。櫂のそばにいてあげて』
『……ありがとうございます』
おばさんとおじさんに頭を下げてからわたしは一歩ずつ、自分の足で櫂の方に進んでいく。
きっと、何かの間違いだ。
悪い夢だ。わたしは夢でも見ているんだ。
ここに来るまで、わたしは心の中でどこかでそう願っていた。



