きっと、君に怒られるだろうけれど



わたしだって、櫂と一緒にいると居心地がいい。

“あの日”までずっと一緒にいたんだもん。

彼も無意識にわたしのことを覚えていてくれたりするのかな。
いや、そんなことに期待したってどうせ無駄に終わるんだからやめておこう。


「俺、小芝さんのこともっと知りたい」


硝子玉のように澄んだ瞳が真っ直ぐにわたしを捉える。


「知ってどうするの?」

「そ、それは……今後に活かす!」

「それ、活かすところある?」


彼の言葉にくすり、と小さく笑う。

やっぱり、櫂は変わらないなぁ。
ずっと、わたしの好きな櫂のままだ。

いつまでも君らしく、そのままでいてほしい。


「ある!だから教えて!」

「しょうがないなあ」


わたしがそう言えば、にいっと無邪気に微笑みながら「よっしゃ!」と、ガッツポーズをして喜んでいる。


「喜びすぎだよ」

「そりゃあ、喜ぶだろ。つーか、コレ捨てないからな」


そう言って見せてきたのは今朝のピンク色の付箋だった。