きっと、君に怒られるだろうけれど



結局、あれだけ意気込んでいたのにわたしは彼の幸せを見届けることはできなかった。

それどころか楽しくて幸せな思い出が増えただけだった。


「お前は三春に後悔させたまま、死ぬつもりなのか。あれだけ幸せがどうのこうのって言ってたのに」

「だってさー」

「記憶がなくなるからか?覚えていないからか?そんなの関係ないだろ。ちゃんと今の三春と向き合ってやれ」


きっぱりと言い放った西神にわたしは目を丸くして驚いた。


「なんか西神、変わったね。前より雰囲気が柔らかくなった」


死神だから雰囲気が柔らかくなったら困るんだろうけど、前よりも人間らしくなった気がする。


「……お前たちのせいだ」

「え?」

「お前に出会って俺は感情を知ったんだ。お前たちを見ていると、誰かを想うってことがこういうことなんだと分かった気がする。今は人間の想いは素晴らしいと思うよ」


前かがみになってじっと遠くを見つめながら、穏やかな表情で口許を綻ばせた。


西神は死神だけど、きっと優しいのだ。


どういう経緯で死神になったのか、最初から死神として生を受けたのかは知らないけれど、わたしにとってはもう大切な仲間だ。