きっと、君に怒られるだろうけれど



でも、ちゃんと好きだってことを愛しい君に伝えたい。


誰かに想いを伝えるって簡単なことのように思えて難しいものだ。

自分の気持ちをさらけ出すのは勇気がいる。

失敗したらどうしようって考えたら言葉が出てこない。
それでも、伝えてみないと始まらないことだってある。

たとえ失敗したとしても伝えられずになかったことになっていくよりはマシだ。


「そうか。俺には何もできないが、きっとお前の想いは小芝美桜に伝わるさ」


そう言いながら何を思ったのか西神は窓際まで歩いていく。

立ち止まった場所は美桜の席だ。

そして何を思ったのかカーテンを開けて裾を持ち上げた。
瞬間、カーテンで隠れていた窓が晒され、何かの文字が見えた。

誰かが湿気で曇った窓に落書きをしていたらしい。


恐る恐る近づいてぼんやりとしていた文字がはっきりと読めたとき、胸がぎゅっと苦しくなるほど締め付けられた。


「こ、これって……」

「奇跡を起こせ。三春櫂」


―――相合傘の絵の中に美桜/櫂と書かれていた。


胸いっぱいに君への想いがどこまでも続く海のように広がっていく。

この落書きはもうすぐ消えてしまうだろう。
それでも俺の気持ちは消えない。