「おっ、一緒だな。桜が綺麗なだけじゃなくて道端に咲いてるタンポポとかつくしとか彩りが綺麗で、毎日ワクワクするんだよなぁ。おまけに気候もあったかいし、こうして新しい出会いもあるさ」
「新しい出会い?」
一度聞いたことがある春が好きな理由に新しい出会いという言葉が加わっていて疑問がそのまま口からぽろりと洩れた。
「そう。今、俺と小芝さんが話してるのって新しい出会いじゃん」
「まあ……去年も同じクラスだったけど話したこと無かったもんね」
屈託のない笑みを浮かべて話す彼にわたしは平然と嘘をついた。
話したことがなかったなんて、真っ赤な嘘だった。
だけど、去年同じクラスになって、そこから付き合って1年近かったんだよ、なんて言ったって君には通じないから仕方ない。
「こんなことならもっと早く話しかけとけばよかった」
「なんで?」
「小芝さんといるとなんかわかんねえけど居心地よくてさ。これからもっと仲良くなれそうだから」
「なにそれ」
呆れたように笑ってみせたけれど、わたしの心臓はばくばくと騒がしく音を立てていた。



