きっと、君に怒られるだろうけれど



美桜がいなくなるなんて……そんなの、耐えられない。


「安心しろ。たとえ小芝美桜が死んでもお前は彼女の存在を覚えてはいない。苦しむこともない」

「……は?なんだよ、それ。さっきから何の冗談なんだよ」


頼むから、悪い冗談はやめてくれ。
美桜が死んでも美桜の存在を俺は覚えていないだなんて。

それもさっき言っていた“契約”に関係しているだろうか。


「そういう契約だからな。現にお前は小芝美桜との関係性を何も覚えていないだろう」

「関係性って……俺たちは最近仲良くなって……」


すっと俺の前に差し出された一枚の写真を見て、俺は言葉を失った。

そこに映っていたのは桜の木をバックにして弾けるような笑顔を浮かべている俺と……美桜だった。

俺は学ランで美桜はセーラー服。

手に黒い筒を持っていることから卒業式の写真だと思う。

だけど、俺にはこんな写真を撮った記憶はない。
というより、美桜と同じ中学だったなんて知らなかった。

そこに映っている俺たちは仲睦まじい姿で笑い合っていて、まるで恋人同士のように見える。


「―――お前たちは、恋人“だった”」


その言葉を聞いた瞬間、頭を鈍器で思い切り殴られたような強い衝撃が走る。


俺たちが恋人だった……?