きっと、君に怒られるだろうけれど



それ以外に西神が俺に話しかけてくることなんてないだろうし。

西神は美桜のことが好きなのだろうか。
この前に、好きな人はいないと言っていたのは彼なりの気遣いだったのだろうか。

あの時……西神は、どんな気持ちで美桜の涙を見ていたのだろう。


「教室に人がいなくなったら話がある」


人がいたら話しづらいってことか。
それか人に聞かれたらまずい話とか。

俺は西神の言葉に「わかった」と返す。

すると、西神は何も言わずに自席へと戻ってクラスメイトが帰るまで本を読み始めた。

俺はこんなに不安でいっぱいだというのにアイツは至って普通そうで少し腹が立つ。
まあ、西神が取り乱しているところなんて想像はできないけどさ。

することもない俺はスマホを取り出して暇つぶしにSNSを開いた。
しばらく経ってからぐるりと教室を見渡す。

誰もいない。俺と西神の二人だけとなった。
あまりにも静かな教室内はザーザーと降りしきる雨音がやけに大きく教室に響いて聴こえる。

諦めろ、とか言われんのかな。
どっちにしてもいい内容じゃない気がするな。