きっと、君に怒られるだろうけれど



「……うん、好きだよ」


しばらくの沈黙の後、俺は初そっと気持ちを吐き出した。

ちゃんと口にしたのはこれが初めてだった。
自分でも驚くほど緊張していて、口から心臓が飛び出そうなくらい鼓動が音を立てている。

すると、ドアの方からガタン、と音がしてそちらに視線を向けるとそこには気まずい表情を浮かべた美桜が立っていた。


ちょっと待って。

今の言葉、聞かれたか?
それはかなりまずい。

まだちゃんと告白もできていないのに。


突然のことに俺も佑香も驚いて言葉が出てこない。

そんな俺たちを交互に見ながら美桜がぎこちない笑顔を浮かべ、口許を開いた。


「わ、わたしってばタイミング悪すぎだよね。

ていうか、おめでとう!二人は美男美女だしめちゃくちゃお似合いだと思う!幸せにね!

じゃあ、邪魔するのは申し訳ないからわたしはここで退散っと!また明日!」


何かに急かされるように早口でそう言うと、彼女は逃げるように去って行ってしまった。

今日の誤解だってまだ解けていないというのに、また勘違いされた。

このままじゃ、まずい。
せめて、誤解だけは解きたい。


「櫂……」

「わかってる。悪い、佑香。気を付けて帰れよ」


それだけ言うと、焦る気持ちを抱えたまま、俺は佑香の顔を見ることもなく、逃げて行った美桜を追うように教室から飛び出した。