きっと、君に怒られるだろうけれど



「はあーもう!辛気臭い顔しないの!」


いつまでも顔を上げない俺に痺れを切らした佑香が俺の背中を思いっきりバシン!と叩いた。


「いてっ……!」


あまりの勢いにぐらりと体がよろける。

何とか転ぶ前にバランスを取り戻した俺は涙目で佑香の方を見た。


「なによ」

「力強すぎだろ」

「いつまでもクヨクヨしてるあんたに喝を入れてあげたのよ」

「ごめんって」


俺が気まずくさせたのは申し訳ないと思うけど、もっと手加減してくれよ、と心の中で嘆きながら背中をさする。


「はー!スッキリした!」


そう言った彼女の瞳からはもう涙は流れていなかった。

きっと、俺の前だから無理してるんだろうけどその表情は先程とは違い、少し吹っ切れたように見えた。

その表情を見て、俺はほっと胸をなでおろした。


「一緒に帰るか?」


俺がそう言うと、彼女は「ううん」と左右に首を振った。

確かに振られた相手と一緒に帰る気分ではないか。
さすがに俺の配慮が足りなかった。反省だ。


「あのね、櫂」

「ん?」