きっと、君に怒られるだろうけれど



中学一年の誕生日に買ってもらった一眼レフのカメラをケースから取り出して、電源をつけ、ボタンを押す。

すると、画面モニターにずらりと過去に撮影した写真たちが表示された。

画面をフリック左右にフリックし、写真を見返していく。
だけど、しばらく見返していると俺はある違和感に気が付いた。


「この黒い靄はなんなんだ……?」


景色をバックに誰かを撮っているはずなのに、その肝心の人物には黒い靄みたいなものがかかっていて誰だか判別できない。

母さんや父さん、他の人はみんな普通に撮れているのにその人を撮ったであろう写真にだけ靄がかかっているのだ。

俺の撮影技術が足りなかった、とかいう単純な問題ではないような気がする。

いくら俺が未熟な半人前だったとしてもこんな意図的に隠すように仕組まれた写真なんて撮れない。

そういえば、たまに知らない会話が脳内で再生されるアレと感覚が似ている。


まさか、これも関係してるっていうのか?

でも、一体なんだというのだろう。

どうして名前も思い出せなければ、姿すら映すことができないのだろう。


いくら考えても、頭を捻ってみてもそれらしい答えなんて出るわけがなかった。