頭の中から過去の記憶を引っ張り出してきても、数学の先生がイケメンで筋肉がムキムキだ、とか、物理の先生の言葉の語尾は絶対に「~だからねーって」だとか、どうでもいいような、くだらない会話しかしていなかったような気がする。
だけど、それがすごく幸せだったんだよね。
ありふれた日常の一部を大好きでたまらない君と共有できているような気がして胸がいっぱいで小さな幸せを感じていた。
なんて、もう二度と戻らない時間に想いを馳せながら屋上の真ん中に立って両手を上げ、踵を地面から離して、ぐーっと思い切り伸びをする。
「んー、はあ。気持ちいい」
頬を撫でる風が心地よくて、ふっと笑みがこぼれた。
グラウンドで汗をかいて練習している運動部の生徒たちの声や吹奏楽部が各自で楽器を奏でているのかトランペットやトロンボーンなど様々な音が耳に入ってくる。
なんか日常って感じがしていいな。
屋上から見渡す淡い赤黄色に染まった世界はちっぽけに見えて、でもそれがどこか綺麗だった。



