「お前には内緒だ」
「えー、なにそれ。教えてくれてもいいじゃん」
「ダメだ。俺と美桜の秘密だから。な?」
そう言いながら美桜のほうに視線を向けると、美桜は「別に秘密なんて……」と少し困ったように眉を下げた。
すると、佑香はそんな美桜に気づいているのかいないのか、隣で本を読んでいる西神へと視線を移した。
「ねえー、西神くんもなんか言ってよ」
「コイツたちの秘密なんて大したことないだろ。知るだけ無駄だ」
さらりと吐き捨てられた言葉はいつも通り冷ややかなものだった。
西神ってなんであんなに冷たいんだろう。
世の中のことなんて全部自分には関係ないです、みたいな態度なんだよな。
まあ、それがアイツらしいと言えばそうなんだけど。
「お前なー。まあでもそういうことだから諦めろ、佑香」
「はいはい。別に本気で聞きたかったわけじゃないし」
口ではそう言っているけれど、かなり不貞腐れているのが表情から伝わってくる。
「佑香ちゃんに変なこと言わないでよ」
佑香が前を向いてから美桜が小さな声でそう言った。
「なんで?」
「勘違いさせてどうするのよ」
「なんの勘違い?」
一体、何を勘違いされるというのだろう。



