だから、美桜には感謝してもしきれない。
「いや、わたし何もしてないよ。櫂が勇気出して頑張ったからじゃん」
頬杖を突きながらにっこりと微笑んでくれる彼女に自然と俺の頬も緩んでいくのを感じる。
「美桜がいたからだよ」
この短期間で俺の中で美桜の存在がどれだけ大きくなっているのか君は知らないだろう。
風船のように膨らみ続けるこの淡い気持ちをいつか君に届けたい。
そう思っていることも。
「わたしはね、ずっと櫂のこと応援してるよ」
鈴のように可愛らしい声が耳に届いた瞬間、開いていた窓から風が吹いて、彼女の柔らかい髪がふわりと揺れる。
その中で優しく目を細めている美桜から目を離すことができず、ただ心を奪われた。
だけど、その笑みは優しさで溢れているはずなのにどこか切なさを含んでいるように見えてチリリと胸が焦げるように痛んだ。
まるで“わたしはそばにいられないけど”と言われているような感じがしたのだ。
「ありがとな」
胸の痛みを隠して何とか絞り出した声に美桜は何でもないかのようにまた笑ってくれた。
「おはよー!二人で何話してんの!」
タイミングがいいのか悪いのか佑香が登校してきて俺の前の椅子を引いて腰を下ろした。



