「母さん、父さん。俺、やっぱり卒業後は写真のことを学べる学校に行きたい」


二者面談があったその日の夜。

俺はソファに座ってテレビを観ている母さんと父さんに声を掛けると、二人は黙ってゆるりと視線だけをこちらに向けた。

目が合っただけでばくんばくんと心臓が暴れ出して逃げ出したい衝動に駆られる。俺は今すごく緊張している。

こうして二人と話すのは3日ぶりだ。
なぜなら、3日前に進路のことを話して反対されてから二人とは距離を取っていたから。

あの時は反対されたことがショックで、冷静に考えることができなかったけれど、美桜と話して、ちゃんと俺の考えていることを、俺がどれだけ写真を撮ることが好きなのかを伝えるべきだと思ったのだ。


俺の目を見て何かを悟った母さんがリモコンを手に取って、そっとテレビの電源を落とす。


すると、バラエティー番組の芸人の声で騒がしかった部屋から一気に音が消え、父さんが持っていたお酒の缶をゆっくりとテーブルへと置いた。


コトン、という頼りのない音が酷く静かなリビングに響く。