きっと、君に怒られるだろうけれど



***


放課後。

所々ペンキの剥げた屋上の古びたドアを開けると、ギィィと錆び付いて軋む嫌な音がした。

だけど、一歩外に足を踏み出すと、ふわりと吹いた春風が腰まで伸びたわたしの髪をゆらりと優しく揺らす。


「ほんとに来るのかな」


つい、不安が口からこぼれ落ちた。

櫂は約束を破るような人ではないことはわかっているけれど、初めて話したようなやつといきなり二人きりになんてなる?

わたしならありえないけれど、櫂だからこそありえる話だ。

彼はそういう世間体や周りの目は何も気にせずに仲良くなりたいと思ったら直球で来るタイプだから。

でも、来なかったらどうしよう。
それはそれでちょっとメンタルやられるかも……って違う違う。

わたしのこの恋は押し殺さないとダメなんだから。

来なかったらそれでよかった、となるだけでショックを受ける必要なんてどこにもない。

ていうか、何を話そう。
わたしたちっていつもなんの会話してたっけ。