長いようで短かった夏休みが終わり、今週から新学期に突入していた。

あれだけ毎日蝉の鳴き声で騒がしかったのに今ではかなり静かになって季節の流れる速さを感じる。


今日は新学期になってさっそく進路についての二者面談が開かれることになっていた。


「小芝の現時点での進路は大学進学だな」


進路指導室のぽつんと置かれた綺麗な机に担任の先生と向かい合わせに座り、聞かれたことに「はい」と答える。


「よし、わかった。この成績だと現状を維持できれば合格できるから気を抜かずに頑張ろう」

「わかりました」


そう返事をしたけれど、進路希望の用紙に書いた大学の名前なんて適当だ。
本気でその大学に進学するつもりはないし、できない。

最初から行くつもりもないけれど、とりあえず形だけでも何か書いておいたほうがいいと思って書いただけ。


「教室に戻っていいぞ」

「失礼しました」


先生の指示に従い、進路指導室から出た。

ちょっと寄り道してから教室に帰ろうかな。
そう思い、屋上に行くまでの間にぼんやりとした頭で彼のことを考える。

櫂は一体どんな進路を選択するのだろう。

本当は夏休みに二人で花火なんてするつもりはなかったのになあ。