きっと、君に怒られるだろうけれど



どのくらい見つめ合っていたのだろう。

きっと時間にすれば数秒だ。
それでもわたしには何分にも何十分にも思えるくらいだった。


「あ、ごめん。思ったよりも近かった」


やっと、身体を動かして慌てて彼から離れると、視線を外へと向ける。

こんなの直視できるはずがない。
尋常じゃないくらい心臓の音がうるさくて心の中で何度も静まれ、と唱える。

それなのにあの日のキスが脳内に蘇ってきて徐々に顔が熱を帯びていく。


もう戻れないことなんてわかっているのに。


「いや……俺も急にごめん。美桜の顔が綺麗すぎて見とれてた」


ほんのりと頬を赤らめて視線を彷徨わせながら歯の浮くような言葉を吐いた櫂。

こういう自分の気持ちに正直で真っ直ぐなところにわたしは惹かれたのだ。


「イケメン櫂くんに褒めてもらえるなんて光栄です」


まだ鳴りやまない鼓動の音を隠して冷静を装う。

君への好きが溢れたこの音が、どうか君には聞こえていませんように。


「バカにしてるだろ」

「してないよ」