「意味はあるよ。幸せになってほしいんだもん」
そのためにわたしはここにいるのだから。
自分の気持ちも押し殺すのは彼の幸せを笑顔を守るため。
「……三春が一番幸せそうに笑っているのは決まってお前と一緒にいる時なのに。まあ、それはお前にも言えるが」
西神は表情を変えず、小さな声でぽつりと何かを呟くとわたしを置いて先に歩いて行ってしまう。
「あ、ちょっと待って!今なんて言ったの!ごめん!先行くね!」
西神は櫂と佑香ちゃんを抜かして先へ行ってしまったから驚いたようにこちらを見つめている二人に声をかけて急いで彼の後を追った。
西神が心配だったからじゃない。
西神がいなくなったあの三人の空間にとてもじゃないけれど、わたしの心が耐えられる気がしなかったからだ。
彼の新しい恋を見守る覚悟なんてできていたはずなのにお似合いの二人を見ていると、苦しくて張り裂けそうなほど胸が痛んだ。
君とわたしの想いが交わることなんてない。
二つの風船が綺麗に膨らんだハート形の風船が両想いだとするならば、今のわたしは片方だけ君への想いで膨らんだハート形ともいえない何とも不格好な風船だ。
いつかしぼんでしまうわけでもなく、ただ膨らみ続けるだけのわたしの虚しい恋の形。



