きっと、君に怒られるだろうけれど



お互い、喜びを隠しきれず照れくさそうに笑う。

そんなわたしたちを窓から射し込んだ夕暮れの光が暖かく照らしてくれる。

大好きな人と同じ気持ちだということがわかり、幸せな感情が心の底から湧き上がってきて真っ直ぐに櫂を見つめることができない。


だけど、


『美桜、大好きだ』


そんな言葉と共に彼の綺麗な顔が段々と近づいてくる。

やがて、二つの影が重なって甘く愛おしい時間が流れた。


***


「美桜ちゃん!起きて!次、移動教室だよ!」


そんな声が遠くの方から聞こえてきてハッと瞼を開いた。


ぱちぱちと数回、瞬きをしたあと視界に飛び込んできたのはこちらを心配そうに見つめている佑香ちゃんと櫂、西神の姿だった。


授業が終わって、いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。

さっきのは夢というよりわたしの記憶。
中学3年の時、櫂に告白されて付き合った日の甘く幸せな記憶だ。

なんでこんなときに思い出してしまったんだろう。
今でもわたしはあの幸せに縋りついてしまっているのだろうか。

あの時は冗談なんかじゃなく、本気でずっと一緒にいられると思っていた。
でも、その幸せを自ら手放したのはわたしなのだ。

今更、こんな夢を見たってどうにもならない。
わたしが生きる現実は変わらない。

時間を巻き戻すことなんて不可能なのだから。


「ごめん、寝てた」