きっと、君に怒られるだろうけれど



「これ!小芝さんが書いたんだよね」


そう言って見せられたのは先程、彼が見比べていた付箋でそれを見た瞬間、わたしの心臓がドクン、と嫌な音を立てた。

どこにでも売っているような付箋だからさっきは気づかなかったけれど、わたしはこの付箋を知っている。

わたしが考えたポエムが書かれている付箋だから。


なんで、なんで彼が持っているの?

しかもよりにもよってなんで櫂が……?


「ち……違うよ!」


慌てて否定しても、わたしを見つめる彼の瞳はちっとも揺るがない。


「だって、字が同じじゃん。人それぞれ字には癖とか特徴があるもんだからさ」


付箋の“桜”と先程わたしが書いた“桜”という文字を交互に指さしている。

ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。

これ以上、否定しても無駄な気がするから早く認めた方がいいのかもしれない。

わたしの目に映っている文字はどう見ても一緒の字体。

当たり前だ。
この付箋はわたしが書いたものなのだから。

よりもよって櫂の手に渡ってしまうなんてわたしって本当にツイてないなあ。