大丈夫。美桜はきっと俺の壮大な夢を笑ったりしない。
口に出して笑われるのが怖くて親にすら言えず、ずっと胸に秘め続けていた夢。


「うん。誰にも言ったことなかったんだけど俺、世界中の色んな景色や人の写真を撮ってみんなに届けるのが夢なんだ」


それを世間ではカメラマンやフォトグラファーという。

俺が切り取った世界の美しさを、景色を、その中で生きる人々をいつか写真集にして世に出したい。

そしてまだ世界を知らない人たちに届いたらいいな、なんて大きすぎる夢を抱いているのだ。


「素敵な夢だね。いつか叶うよ、きっと。そしたらその時はわたしに世界中の写真を見せてね」


キラキラと眩しいくらいの笑顔を浮かべながら「友達の特権ってやつ!」とVサインを俺に向ける。


「まあ、楽しみに待ってて」


その時は“友達の特権”ではなくて“恋人の特権”になっているといいな、と思いながら俺もVサインを返した。

美桜に肝心の答えを聞くのを忘れたことを思い出したのは家に帰った後だった。


―――まるで運命に導かれるみたいに俺たちは出会った。