コンクールなどで大勢の人に見てもらうことよりもたった一人の好きな女の子に見せる方が緊張するなんてどうかしているかもしれないけど。
この前、桜の木の下で撮った美桜の写真はまだ移していない。
勝手に移していいものなのかと迷っているから。
「じゃあ、教えなーい」
「わかった。見せるから。絶対教えろよ」
「おけぴよ」
「なんだよ、その怪しい返事は」
絶対、ふざけてるだろ。
でもそんなやり取りさえもどこか懐かしく感じるのはどうしてなのだろうか。
なぜだか、美桜とこの道を二人で歩くことが初めてのように感じない。
何度も、何度も歩いたような気持ちになるのだ。
美桜と二人でこの道を歩くことなんて今日が初めてなのに。
「うるさいなあ。いいから早く見せてよ」
ほらほら、と俺に向かって手を差し出してくるから仕方なくポケットからスマホを取り出してフォルダを開く。
そのまま美桜の小さな手のひらの上に置いた。
「ありがと」



